成長投資枠が余っているから、気になる個別株を買ってみたい。その前に決めておきたいのは、銘柄名だけではありません。1社にいくら持つか、その会社が半値になったら資産全体にいくら響くかまで計算すると、買付額を判断しやすくなります。
NISAは利益への税制優遇であり、企業の業績悪化や株価下落を防いでくれる制度ではありません。「非課税だから多めに買う」の前に、金額と保有理由を具体化しましょう。
1社への投資が10%と30%では、同じ下落でも影響が違う
| 投資資産全体500万円の仮定 | A:1社へ50万円 | B:1社へ150万円 |
|---|---|---|
| 購入時点の1社の比率 | 10% | 30% |
| その株だけが50%下落した場合 | 25万円の評価減 | 75万円の評価減 |
| 資産全体に対する評価減 | 5% | 15% |
| その株が全損した場合 | 50万円の損失 | 150万円の損失 |
Aなら安全、Bなら危険という線引きではありません。表の目的は、株価の下落率を家計が受け止める円の金額へ変えることです。勤務先の持株や、保有投信に含まれる同じ企業・業種まで重なれば、実質的な集中は表より大きくなる可能性があります。
金額を逆算する例
「この1社が50%下落したときの影響を、投資資産500万円の3%=15万円以内に抑えたい」と仮定すると、購入額は15万円÷50%=30万円が目安になります。ただし全損なら30万円で、損失は15万円に収まりません。想定を超える下落への備えも別に必要です。

買う理由を、次の決算で確かめられる形にする
「AI関連だから」「高配当だから」だけでは、保有を続ける条件が曖昧です。企業のIRページで決算短信・決算説明資料・有価証券報告書などを読み、期待する変化と、その確認場所を1組にします。
| 架空の会社を調べる記入例 | 買う前の仮説 | 確認する資料・数字 |
|---|---|---|
| 売上の成長 | 新しい製品の販売が継続して伸びる | 部門別売上、受注、会社の業績見通し |
| 利益の質 | 売上増が一時的な費用増だけに消えない | 営業利益率、特別損益の有無 |
| 現金と借入れ | 成長投資を続ける資金余力がある | 営業キャッシュフロー、現金、有利子負債 |
| 配当 | 一時的な特別配当だけではない | 配当方針、利益・現金との関係、減配の条件 |
| 価格 | 期待が既に高く織り込まれていないか | PER等と会社予想、同業比較、比較期間 |
指標が1つ低いだけで割安とは言い切れません。利益が一時的に膨らんだ会社ではPERが低く見えることもあります。高配当でも、業績悪化と株価下落で利回りだけが上がっている可能性を確かめます。
NISA特有の注意:損失はほかの利益と相殺できない
NISA口座で売却損が出ても、課税口座の利益との損益通算や損失の繰越控除はできません。国税庁のNISA制度解説で確認できます。
たとえば課税口座で20万円の利益、NISAで20万円の損失が出ても、合計がゼロだから課税口座の税金もゼロ、とはなりません。損失を出す前提で買う必要はありませんが、非課税のメリットだけを見て、税務上の損失の扱いを忘れないようにします。
また、売却すると翌年以降に再利用できるのは取得額分の総枠です。当年の年間枠がその場で戻るわけではありません。短期間に売買を繰り返す計画は、枠の消費も考慮します。金融庁のNISA案内で年間枠と総枠を区別して確認してください。
国内株の配当は、受取方式も見ておく
国内上場株の配当をNISAで非課税にするには、証券口座で受け取る「株式数比例配分方式」を選びます。銀行口座や配当金領収証で受け取る設定のままだと、NISA保有でも配当が課税されます。注文後ではなく、保有を始めるときに確認しておきたい項目です。
外国株は現地課税などの条件が異なります。国内株の説明をそのまま当てはめず、取扱証券会社の税金の案内を確認してください。
売る条件は「下がったら」だけでなく、保有理由から書く
- 事業の前提が変わった:期待した部門が縮小し、回復計画にも納得できない
- 財務の前提が変わった:想定外の資金不足や借入れ増加が続く
- 資産配分が変わった:値上がりや追加購入で、1社の比率が自分の上限を超えた
- 資金用途が変わった:長期保有の予定だったお金を近く使う必要が生じた
これらは機械的な売却命令ではなく、再検討する条件です。逆に、購入価格より下がったという理由だけで買い増すと、保有理由の劣化と集中の拡大が重なることがあります。買い増し前にも、最初の表で保有比率を計算し直します。
購入前メモの完成形
商品名__/買う理由__/確認する資料と指標__/購入額__円/購入後の1社比率__%/半値時の影響__円/前提が崩れたと判断する条件__。この空欄を埋められなければ、成長投資枠を空けたまま調べることも選択肢です。
制度・参照情報は2026年9月8日確認。本文の試算は条件を置いた例で、筆者の運用実績や将来の利益を示すものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。
日本株インデックスと個別株の役割を分けるには、国内株式の使い分けと保有比率の計算例が確認に使えます。購入前メモを継続して残す方法は、売買判断を記録するテンプレートにまとめています。