「子どもが生まれたら、生命保険はいくら必要なのだろう」。そう考えて検索すると、数千万円という金額や、年収の何倍という目安が目に入ります。しかし、同じ年齢の子どもがいる家庭でも、住まい、働き方、貯蓄、周囲の助けは違います。
先に決めたいのは保険金額ではなく、家族の暮らしが変わったとき、何の支出が残り、どの収入が続くのかです。この記事では、相談に持っていくための家計の整理方法を紹介します。
2026年9月6日に公式情報を確認した解説であり、筆者の保険契約や受給体験の紹介ではありません。計算例は架空の条件で、個別の必要保障額や商品の加入を勧めるものではありません。
家庭の備えを、平均額だけで決めない
必要な備えは、家族構成や資産、子どもの年齢などによって変わります。生命保険文化センターも、将来の支出と収入を積み上げて不足を考える方法を紹介しています。生命保険文化センター「生命保険の加入金額の目安は?」
ただし、最初から数十年分を精密に計算しようとすると手が止まりがちです。まずは次の3つの場面を分け、普段の家計とどこが変わるかを書き出してみます。
- 数か月間、片方が仕事を休む。
- 仕事や家事の負担を長く減らす必要がある。
- 家族の一人が亡くなり、残る家族の暮らしを組み直す。
休業中の収入を補う計算と、遺された家族の長い生活を支える計算は別です。ひとつの「もしも」の金額にまとめると、使える給付や必要な期間を取り違えやすくなります。
夫婦それぞれについて、収入と家事・育児を確認する
家計への影響は、給与の大きい人だけを見ても分かりません。送迎、食事の用意、学校との連絡、通院の付き添いなどを誰が担当しているかも重要です。
たとえば、家事・育児を多く担う人が療養すると、もう一人が勤務時間を減らしたり、外部サービスを利用したりする可能性があります。本人の給与が少ないから備えも小さくてよい、と機械的には判断できません。
夫婦で話すときは、「自分がいなくなったらどうなるか」という大きな質問より、「来月、平日の送迎を担当できなくなったらどうするか」と具体的にした方が整理しやすくなります。
| 確認する項目 | 配偶者Aに変化がある場合 | 配偶者Bに変化がある場合 |
|---|---|---|
| 給与・手当 | 何が減り、何が残るか | 何が減り、何が残るか |
| 家事・育児 | 誰が引き継ぎ、費用が増えるか | 誰が引き継ぎ、費用が増えるか |
| 残る側の仕事 | 今と同じ時間で働けるか | 今と同じ時間で働けるか |
| 公的・勤務先の給付 | 対象、期間、支給時期 | 対象、期間、支給時期 |
| 周囲の支援 | 頻度、期間、無理のない範囲 | 頻度、期間、無理のない範囲 |
この表に正解を一度で入れる必要はありません。「親に頼めると思う」なら、そのまま確定した支援として扱わず、頼める頻度と期間を確認する項目として残します。
住居費と教育費は、生活費から分けておく
毎月の引き落とし総額だけを見ると、将来残る支出が見えにくくなります。食費・光熱費などの生活費、住居費、教育費、臨時支出を分けておきましょう。
住宅ローンがあるから、住居費が必ずゼロになるわけではない
住宅ローンに団体信用生命保険が付いている場合は、対象となる人、借入れ、支払条件を確認します。住宅金融支援機構の団信も、所定の保障によってローンを弁済する仕組みであり、家族の生活費を受け取る保険とは役割が異なります。住宅金融支援機構「機構団体信用生命保険特約制度」
実際の契約を確認せず「片方に何かあれば夫婦のローンがすべてなくなる」と計算しないでください。また、返済がなくなったとしても、管理費、修繕、固定資産税など、その家に住むための支出は別に考えます。賃貸なら家賃を継続する場合と、転居する場合を分けます。
教育費は「毎月」と「進学時」に分ける
授業料以外にも、教材、通学、塾や習い事などがあります。文部科学省の学習費調査も、学校教育費・学校給食費・学校外活動費を分けて調べています。文部科学省「子供の学習費調査・調査の概要」
平均額を家族の予算として丸ごと使うのではなく、現在の支出と希望する進路から、継続費用と入学時のまとまった費用を分けます。まだ決めていない進路は「現時点の希望」として書き、あとで更新できるようにします。
使える収入と資産を、二重に数えない
支出が整理できたら、公的保障、勤務先の給付、続けられる就労収入、今の保険、使える貯蓄を並べます。金額が不明なものは「要確認」とし、ゼロにも満額にも置き換えないことが大切です。
遺族基礎年金などには、対象者や子どもの年齢に関する条件があります。将来の大学費用を考えるときに、現在の給付が同額で続くと置かないよう、受給期間も確認します。日本年金機構「遺族基礎年金の受給要件・対象者・年金額」
貯蓄については、預金残高と「この目的で使える金額」を分けます。来月の生活費、近い時期の学費、住宅修繕などに充てる予定のお金を、すべて保険の代わりとして数えると、その別の支払いに穴が空きます。
投資資産も、今の評価額が必要な時期にそのまま使えるとは限りません。売却時期を選びにくい状況まで考え、短期の支払いをまかなう現金とは区別して整理します。
6か月の家計不足を整理する例
以下は考え方を示すためだけの仮定です。実際の公的給付額、標準的な生活費、筆者の家計を示すものではありません。
| 項目 | 説明用の仮定 |
|---|---|
| 休業中の毎月の生活費等 | 25万円 |
| 家事・育児の追加費用 | 2万円 |
| 続く就労収入 | 18万円 |
| 対象と金額を確認済みと仮定した給付 | 5万円 |
毎月の不足は、25万円+2万円-18万円-5万円=4万円です。6か月続くと仮定すると24万円になります。
さらに、一時費用が10万円、別の用途を除いて使える現金が20万円なら、この期間の資金不足は24万円+10万円-20万円=14万円です。
これは「14万円の保険に入ればよい」という計算ではありません。給付が後払いなら入金前の準備額は変わりますし、療養が長引けば期間の見直しが必要です。死亡後の長期的な生活費をこの6か月の試算で代用することもできません。
数字の大きさより、「どの支出が増えるか」「どの収入を確認する必要があるか」が分かれば、最初の整理として役に立ちます。
保険で備える前に、家計の運用でも減らせる負担を考える
すべての心配を新しい契約で解決する必要はありません。夫婦で支払先を共有する、使える公的・勤務先の制度を確認する、送迎を頼める先を調べる、といった準備も家計の混乱を小さくします。
そのうえで、発生すると貯蓄だけでは持ちこたえにくい負担について、既存の保障で足りるかを相談します。毎月の保険料を増やした結果、直近の生活費が不足する形にならないよう、続けて払えるかも同時に確認してください。
今日行うことは、上の「夫婦それぞれの表」を10分だけ一緒に埋めることです。不明な欄が残っても構いません。分からない点を具体的な質問へ変えることで、保険相談も自分たちの暮らしを起点に進められます。
確認した公式情報
確認日:2026年9月6日。個別の保障額や給付の受給可否は、保険者・勤務先・年金事務所等で確認してください。