12月に発表された米国の雇用統計を見ると、かなり堅調に推移している結果が示されたよ。
FRBはこの結果に自信を強めて、金融引き締めに動くだろうね。
前の話では、エネルギーセクターをおすすめしてたよね。
米国FOMCによりテーパリングの開始決定。S&P500の今後は?
そうだね。ETFのVDEなんかは10年近く安値で抑えられていたけど、中期的には盛り上がると思うよ。
リベンジ消費や経済活動再開に向けて莫大なエネルギー需要が生まれるからね。
今回はそれ以外でってことなの?
記事の内容
- 雇用統計から見る経済の行方
- 注目の投資銘柄・領域
労働参加率低下によりインフレ加速
アメリカでは労働市場の状況を雇用統計という形で集計しています。
12月に発表された雇用統計によると失業率の予想は3.9%となっており、当初予想の4.1%を下回りました。
つまり想定よりも多くの人が職を見つけたということになります。
ただ、失業率は改善したものの、悪化しているものがあります。
「労働参加率」です。
労働参加率というのは、労働力人口(就職者+失業者)を生産年齢人口で割った値のことです。
つまり、(働いている人+働きたい人)/ 働ける年齢の人(15-64歳) の値です。
これが1に近づくほど多くの人が働く意志があとみなされます。
この値がコロナ禍以降急激に低下してしまっています。
そもそもこの値の分子に来る数字は、「働くことを諦めた人、復帰の意思はない人」が除外されます。
分母には入っているため、働く意志のない人が増えてくるとこの値は下がるということですね。
その理由はいくつもありますが、分かりやすいところで言うと
- 経済悪化に伴う早期退職で退職した
- 長引くコロナ禍で専業主婦になる人が増えた
- 大学進学率向上により学生が増えた
- 上記以外の理由で働くことを諦めた
こういった理由により低下します。
そして、低下することにより何が問題かということが一番重要なのですが、それは経済をインフレさせてしまうということです。
労働参加率が下がるということは働き手が集まりづらい状況を指し示しますから、アルバイトなどが集まりづらいということになり、結果として人手不足に陥ってしまいます。
そして人手不足を解消するために雇用者は給与を引き上げて魅力をアピールするのですが、それでもまだ集まらない→さらに給与を上げて募集。
といったことが行われています。
人件費は高騰しても、人が増えているわけではないので生産性はかわりません。
しかし人件費増加は商品の価格上昇に直結します。
結果として、各商品の価格が悪い形でインフレしてしまうということになります。
ちなみに労働参加率の低下により、その割合は1970年頃と銅水準となってしまいました。
インフレの種類
そもそもインフレにはいくつか種類があります。
- 材料が足りなくなって素材価格が高騰した結果、商品価格が向上
- 人手が足りなくなって人件費が高騰した結果、商品価格が向上
- 需要に対して供給が急激に減って価格が高騰
- 供給に対して需要が急激に伸びて価格が高騰
一般的にはこのようなところでしょうか。もちろんもっとほかにもあるでしょう。
重要なのは、上の3つは「生産性の増加を伴わない悪いインフレ」であるということです。
悪いインフレは経済の循環を詰まらせてしまいます。
そしていま、アメリカを中心に世界では上3つの悪いインフレが同時に発生しています。
※半導体不足や人手不足、車不足など
その結果としてFRBはFOMCにてインフレが一時的なものという見立てを撤回してテーパリングに舵を切ったということになります。
長期金利低下のためにFRBは資産圧縮を開始
こうした悪いインフレの後押しを受けて、長期金利が2%弱で推移しており、長期金利の上昇が2年ぶりの水準に高まっています。
これによりFRBは先日、保有資産の売却による資産の圧縮を示唆しました。
いままで量的緩和で買い進めていた9兆ドルまで膨らんだ資産を減らすということです。
一段と国内の金融引き締めが進むことになります。
テーパリング完了後に資産圧縮を行う可能性があるようです。
資産の売却が進めば市中にあるお金はFRBに集まることになりますから市場のドルが減り、相対的に市場のドルの価値が上がることを期待しているわけですね。
そうすることにより、ドルの価値が下がる現象であるインフレに歯止めをかけようとしています。
さらに償却対象に債権を多めに組み入れることで、長期債の金利を引き上げることを狙っています。
短期金利と長期金利の差が近づいてしまうと、一般人にお金を貸す側の銀行が低すぎる金利を理由に長期の融資をしてくれなくなってしまいます。
金利が近づくとなんで貸してくれないの?
例えば住宅ローンなんかは長期のローンなんだけど、これの金利が下がってしまうと銀行側は利益を出せないんだ。
- 短期金利は銀行が預金者に払う利息
- 長期金利は債務者が銀行に払う利息
なんだよ
あーなるほど!
金利差がなくなると銀行が儲からないから貸したくないんだ。
そうなると今度は、「買いたいのに買えない消費者」が増えてしまい経済が後退します。
これを回避するために金利差を拡大して銀行が貸しやすくしたいのですが、今度は金利が高いと借りる側が借りにくくなり、結果として経済が後退します。
FRBは株式市場の混乱よりも長期金利優先か
今回のFRBは、明確に長期金利を上げなければ経済は確実に後退します。
これは金融政策により短期金利が上昇してしまう以上、それに合わせて長期金利も上げないといけないからです。
その為に資産の圧縮により債権を放出するはずです。
つまりこれはFRB側からすれば、株式市場が多少混乱したところで長期金利の上昇のための行動は曲げられないということになりますから、中期的には金利上昇局面に入るでしょう。
金利上昇局面に強い銘柄は?
ようやく本題だ。長期金利上昇の可能性がたかくなっているけど、このような局面で良い投資先は何かを紹介するよ。
まずは手を出さないほうがいい領域についてですが、これは所謂ハイパーグロース株と言われるエリアで高PERの株は避けたいです。
なぜなら、長期金利が上昇すると長い視点での利益が期待されている高PER株は価値を下げてしまい、結果的に売られやすくなり暴落しやすいからです。
高PER株は例えばコロナ禍で名を挙げたZoomの会社なども該当し、概ねIT企業が多いです。
ハイパーグロース株はここ最近で70%近く値を下げたものも多くあり、これが長期金利の影響によるものであれば10年近くは高値を更新できない可能性があります。
10年もーーー!?
そうなんだ。だから中期的にはハイパーグロース株とは距離をとって、他の領域に目を向けると良いんじゃないかな?と思っているんだ。
どんな領域がいいの?
この前のエネルギーセクターとは違うんだよね?
ポイントになるのは長期金利の恩恵を受けやすい、金利の影響があまり関係ない領域です。
例えば銀行株なんかはもろに金利の恩恵を受けるでしょうし、金利に関係のない日用品などであれば安定した需要からくるリスク回避が期待できそうだと思っています。
以下の3つを基本としたいと考えています。
バンガード米国金融セクターETF (VHF)
銀行系の株に投資したければこちら。長期金利上昇の恩恵をモロに受ける期待ができます。
バンガード米国エネルギーセクターETF(VDE)
前回も紹介した銘柄。
金利ではなく、コロナ禍後の需要からおすすめしている銘柄です。
バンガード生活必需品セクターETF (VDC)
好況・不況の影響をさほど受けない生活必需品ですが、金利上昇にもあまり影響はないでしょう。
金利に関係なく生活必需品は使われるものだからです。
いい局面で上がらない代わりに、悪い局面でも下がらないんですね。
それでは、今より良い生活を目指して!